「考える力」。
この言葉、最近よく耳にしませんか?
これからの時代、子どもたちが社会で活躍するために、最も重要なスキルの一つと言われています。
学校のテストで良い点を取ることも大切ですが、それ以上に、自分で考え、判断し、行動する力が、子どもの未来を大きく左右するのです。
私は、佐藤拓也と申します。
現在、私立中高一貫校で国語を教えており、今年で教員生活16年目を迎えました。
これまで、多くの子どもたちと接する中で、学力だけでなく、「考える力」を育むことの重要性を痛感してきました。
そして、その力を伸ばすためには、学校だけでなく、家庭での教育が非常に大切だと考えています。
本記事では、現役中学教諭である私が、教育現場での経験と自身の子育て経験を交えながら、家庭でできる「考える力」を育てる会話術についてお伝えします。
この記事を読み終えた後、皆さんはきっと、子どもとの会話がもっと楽しく、そして、子どもの成長につながるものになるはずです。
さあ、一緒に、子どもの未来を拓く「考える力」を育んでいきましょう!
目次
子どもの思考力を育む会話の基本
まず、子どもの思考力を育む会話の基本についてお話しします。
ここでのポイントは、大きく分けて2つあります。
それは、「問いかけ」と「傾聴」です。
「正解探し」ではなく「問いかけ」の大切さ
子どもが何か質問をしてきたとき、皆さんはどのように答えていますか?
すぐに答えを教えてしまうのではなく、まずは「どうしてそう思うの?」と問いかけてみましょう。
子どもに考えさせる「きっかけ」を与えるのです。
例えば、子どもが「空はなぜ青いの?」と聞いてきたとします。
すぐに「レイリー散乱が…」などと科学的な説明をするのではなく、
→ 子どもがその疑問を持った背景
→ 子どもなりの考えや仮説
→ 一緒に調べるためのヒント
これらを会話の中で引き出していくことが大切です。
ここで、私が実際に授業で行っている「問いかけ」の例をいくつかご紹介します。
- 「この文章を読んで、どんなことを感じた?」
- 「もし自分が主人公だったら、どうする?」
- 「この意見について、他の考え方はあるかな?」
これらの問いかけは、子どもたちに「正解」を求めるのではなく、自由に考え、意見を述べることを促しています。
最初はうまく答えられなくても、繰り返すうちに、子どもたちは自分の考えを言葉にする楽しさを知り、思考力がどんどん伸びていきます。
親が話しすぎないためのヒントと工夫
子どもが自分の考えを話しているとき、ついつい口を挟みたくなってしまうことはありませんか?
しかし、そこはぐっと我慢。
子どもの話を最後まで「聴く」ことが大切です。
「傾聴」のポイントは、以下の3つです。
1) 子どもの目を見て、うなずきながら聞く
2) 「それで?」「もっと詳しく教えて」など、話を促す言葉をかける
3) 子どもの話を遮らず、最後まで聞く
例えば、子どもが学校での出来事を話しているとき、「それは違うんじゃない?」と否定したり、「こうすればよかったのに」とアドバイスしたりしたくなるかもしれません。
しかし、まずは子どもの気持ちに寄り添い、共感することが大切です。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
「それは大変だったね。どんな気持ちだった?」 | 「それはあなたが悪いでしょ。」 |
「それで、どうしたの?」 | 「そんなことより、宿題は終わったの?」 |
「よく頑張ったね。」 | 「だから言ったじゃない。」 |
子どもは、自分の話をしっかり聞いてもらうことで、「自分の考えは大切にされている」と感じ、自信を持つことができます。
そして、自信を持って話す経験を積み重ねることで、思考力はさらに磨かれていくのです。
親が「聞き上手」になることは、子どもの「考える力」を育む上で、非常に重要なのです。
ぜひ、意識してみてくださいね。
日常会話を“学びの場”に変える具体策
さて、ここまでは「問いかけ」と「傾聴」の重要性についてお話ししてきました。
ここからは、日常の何気ない会話を、子どもの「学びの場」に変えるための具体的な方法について、お伝えします。
買い物や食卓シーンで活用する問いかけのコツ
例えば、スーパーでの買い物。
これは、子どもに「考える」機会を与える絶好のチャンスです。
- 「今日の夕飯、何が食べたい?」
- 「この野菜、どうやって料理したら美味しいかな?」
- 「予算は3,000円。何を買おうか?」
このように問いかけることで、子どもは、自分の希望を伝えたり、食材について考えたり、限られた予算の中でやりくりしたりする経験を積むことができます。
また、食卓での会話も、学びの宝庫です。
- 「今日の給食、何が美味しかった?」
- 「この料理、どうやって作ったか分かる?」
- 「ニュースで見た〇〇について、どう思う?」
これらの問いかけは、子どもに、その日の出来事を振り返ったり、料理に興味を持ったり、社会問題について考えたりするきっかけを与えます。
ここで、私が実際に家庭で実践している「問いかけ」の例を、表形式でご紹介します。
シーン | 問いかけの例 | 期待される効果 |
---|---|---|
買い物中 | 「この2つの商品、どっちがいいかな?理由も教えて。」 | 比較検討する力、自分の意見を述べる力 |
食事中 | 「この食材、どこで育ったか知ってる?」 | 食材への関心、地理や環境問題への意識 |
テレビ視聴中 | 「このニュース、〇〇ちゃんはどう思う?」 | 社会問題への関心、自分の意見を形成する力 |
就寝前 | 「今日、一番楽しかったことは何?」「明日、頑張りたいことは?」 | 一日を振り返る力、目標設定する力 |
これらの問いかけを、毎日の生活の中に少しずつ取り入れてみてください。
きっと、子どもとの会話がもっと楽しく、学びのあるものになるはずです。
親子で一緒に考え、調べる習慣をつくるメリット
子どもが何か疑問を持ったとき、すぐに答えを教えるのではなく、親子で一緒に考え、調べる習慣をつけることも大切です。
例えば、子どもが「恐竜はなぜ絶滅したの?」と聞いてきたとします。
その場で答えを教えるのではなく、「一緒に調べてみようか」と提案してみましょう。
- 図書館に行って、恐竜に関する本を探す
- インターネットで、恐竜の絶滅について調べる
- 博物館に行って、恐竜の化石を観察する
これらの活動を通して、子どもは、
→ 疑問を解決するための方法を学ぶ
→ 情報収集力や読解力を身につける
→ 知的好奇心を高める
といった、多くのメリットを得ることができます。
ここで、私が実際に息子と一緒に行った「調べ学習」の例をご紹介します。
テーマ:カブトムシの生態
1) 近所の公園でカブトムシを捕まえる
2) 図書館でカブトムシに関する本を借りる
3) インターネットでカブトムシの飼育方法を調べる
4) カブトムシの成長過程を観察し、記録する
5) 観察記録を模造紙にまとめ、発表する
この経験を通して、息子は、カブトムシの生態について詳しく知ることができただけでなく、自分で調べ、まとめ、発表する力を身につけることができました。
「知りたい!」という気持ちは、子どもの「考える力」を伸ばす原動力です。
親子で一緒に考え、調べる経験を積み重ねることで、子どもは、自ら学び、成長していく力を身につけることができるのです。
ぜひ、子どもと一緒に、ワクワクするような「学び」の時間を楽しんでください。
失敗を糧にする子どものマインドセットづくり
子どもが「考える力」を育む上で、もう一つ大切なことがあります。
それは、「失敗を恐れない心」を育てることです。
「点数だけがすべてではない」佐藤流メンタルサポート
私は、常々生徒たちに「点数だけがすべてではない」と伝えています。
もちろん、テストで良い点を取ることは大切です。
しかし、それ以上に、自分の目標に向かって努力し、たとえ失敗しても、そこから学び、次に活かすことが大切だと考えています。
例えば、テストの点数が悪かったとき、頭ごなしに叱るのではなく、
- 「今回は残念だったね。でも、どこが難しかった?」
- 「次はどうすればいいと思う?」
- 「一緒に頑張ろう!」
このように、子どもの気持ちに寄り添いながら、前向きな言葉をかけることが大切です。
ここで、私が実際に生徒との面談で使っている「声かけ」の例を、箇条書きでご紹介します。
- 失敗を責めるのではなく、努力を認める:「毎日遅くまで勉強していたの、先生は知ってるよ。」
- 具体的な改善策を一緒に考える:「次は、この問題集を重点的にやってみようか。」
- 次へのモチベーションを高める:「次はきっと大丈夫!先生も応援してるからね。」
これらの声かけを通して、生徒たちは、失敗を恐れずに、次の目標に向かって前向きに取り組むことができるようになります。
自己肯定感を高めるフィードバック術
子どもが何かを成し遂げたとき、皆さんはどのように褒めていますか?
「すごいね!」「天才!」などと、ただ漠然と褒めるのではなく、具体的な行動を認め、褒めることが大切です。
例えば、子どもが絵を描いたとき、「上手だね!」と言うだけでなく、
- 「この色使い、とてもきれいだね。」
- 「この部分、丁寧に描けているね。」
- 「〇〇ちゃんの絵、先生大好きだよ。」
このように、具体的に良かった点を伝え、子どもの努力や個性を認める言葉をかけましょう。
ここで、私が実際に家庭で実践している「フィードバック」の例を、表形式でご紹介します。
子どもの行動 | 悪いフィードバック例 | 良いフィードバック例 |
---|---|---|
テストで良い点を取った | 「すごいね!天才!」 | 「毎日コツコツ勉強していたもんね。努力が実って先生も嬉しいよ。」 |
部屋の片づけをした | 「やればできるじゃん。」 | 「部屋がきれいになったね!自分から片づけができるなんて、すごいね。」 |
苦手な食べ物に挑戦した | 「偉いね。」 | 「苦手なものにも挑戦できるなんて、勇気があるね。一口食べられただけでもすごいよ。」 |
これらのフィードバックを通して、子どもは、自分の頑張りを認められていると感じ、自己肯定感を高めることができます。
自己肯定感の高い子どもは、失敗を恐れず、新しいことにチャレンジする意欲を持っています。
そして、チャレンジする経験を積み重ねることで、「考える力」はさらに磨かれていくのです。
ぜひ、子どもへのフィードバックを意識して、自己肯定感を育んでいきましょう。
思春期の子どもが自発的に考える環境づくり
中学生になると、子どもたちは心身ともに大きく成長し、親との関わり方も変化してきます。
この時期は、子どもが自発的に考える環境を整えることが、特に重要になります。
中学生の特性を理解する:心の変化と向き合う方法
思春期の子どもたちは、自我が芽生え、自立心が強くなる一方で、心はとても繊細で、揺れ動きやすい時期です。
親の言うことに反発したり、自分の殻に閉じこもったりすることもあるでしょう。
しかし、これは子どもが成長している証です。
頭ごなしに叱ったり、無理に干渉したりするのではなく、子どもの気持ちを理解し、尊重することが大切です。
ここで、私が実際に生徒との関わりの中で、心がけていることをいくつかご紹介します。
- 一人の人間として尊重する:「〇〇さんは、どう思う?」と意見を求める。
- 感情を言葉にする手助けをする:「今は、どんな気持ち?」と問いかける。
- 良いところを見つけて、積極的に褒める:「最近、部活頑張ってるね。」
これらの関わりを通して、生徒たちは、自分の気持ちを素直に表現したり、自分の考えを自信を持って伝えたりすることができるようになります。
親の悩みを解消する実践事例:佐藤家の会話から学ぶ
思春期の子どもとの会話は、難しいと感じることも多いでしょう。
ここでは、私自身の子育て経験から、思春期の子どもとの会話のヒントをいくつかお伝えします。
我が家では、中学2年生の息子との会話で、以下のようなことを心がけています。
- 息子の好きなこと(ゲームやアニメなど)について、私も興味を持って話を聞く。
- 息子の意見を否定せず、「そういう考え方もあるね」と受け止める。
- 一緒に食事をしたり、ゲームをしたりして、息子との時間を作る。
例えば、息子が好きなゲームについて話してきたとき、私は「またゲームの話?」と否定するのではなく、「そのゲームのどんなところが面白いの?」と質問するようにしています。
すると、息子は、ゲームの魅力や攻略法などを、嬉しそうに話してくれます。
また、息子が学校での出来事について話してきたとき、私は「それは違うんじゃない?」と否定するのではなく、「そういう考え方もあるね。でも、先生はこう思うな」と、自分の意見を伝えるようにしています。
大切なのは、子どもを「一人の人間」として尊重し、対等な立場で会話をすることです。
親が心を開いて接することで、子どもも自然と心を開き、自分の考えを話してくれるようになるのです。
思春期は、子どもが大人へと成長する大切な時期です。
親子のコミュニケーションを通して、子どもが自発的に考え、成長していく姿を、温かく見守っていきましょう。
学校と家庭をつなげるコミュニケーション
子どもの「考える力」を育むためには、学校と家庭が連携し、協力していくことも重要です。
教育現場の視点:保護者との連携が子どもに与える影響
学校では、子どもたちに「考える力」を育むために、様々な取り組みを行っています。
しかし、学校だけでできることには限界があります。
家庭での協力があってこそ、子どもたちは、より大きく成長することができるのです。
例えば、学校で「調べ学習」の宿題が出されたとします。
家庭で、親子一緒に調べ学習に取り組むことで、子どもは、
- 家族との絆を深める
- 学習への意欲を高める
- より深い学びを得る
といった、多くのメリットを得ることができます。
また、保護者の方から、家庭での子どもの様子を教えていただくことも、私たち教員にとって、非常に貴重な情報源となります。
- 「最近、〇〇に興味を持っているようです。」
- 「家では、よく〇〇について話しています。」
- 「〇〇が苦手なようです。」
これらの情報を共有することで、私たちは、子ども一人ひとりに合わせた、よりきめ細やかな指導を行うことができるのです。
進路指導やキャリア教育への効果的な関わり方
進路指導やキャリア教育においても、家庭との連携は非常に重要です。
子どもが自分の将来について考えるとき、保護者の方の意見や経験は、大きな影響を与えます。
例えば、子どもが「将来の夢」について話してきたとします。
その場で、「そんなの無理だよ」と否定するのではなく、
- 「どうしてそう思ったの?」
- 「その夢を叶えるためには、何が必要かな?」
- 「お父さん/お母さんは、〇〇ちゃんの夢を応援してるよ。」
このように、子どもの夢に寄り添い、一緒に考えることが大切です。
また、保護者の方が、ご自身の仕事について話すことも、子どもにとって、将来を考える良いきっかけとなります。
- 「お父さん/お母さんは、こんな仕事をしているんだよ。」
- 「この仕事のやりがいは、〇〇なんだ。」
- 「仕事で大変なことは、〇〇だけど、それを乗り越えたときは、とても嬉しいんだ。」
これらの話を通して、子どもは、働くことの意義や、仕事の楽しさ、大変さを学ぶことができます。
学校と家庭が連携し、協力していくことで、子どもは、より広い視野を持ち、自分の将来について深く考えることができるようになるのです。
ぜひ、学校行事や面談などを通して、私たち教員と積極的にコミュニケーションを取っていただき、一緒に子どもの成長を支えていきましょう。
まとめ
さて、これまで、子どもの「考える力」を育てる会話術について、様々な角度からお話ししてきました。
最後に、この記事のポイントをまとめておきます。
- 子どもの思考力を育む会話の基本は、「問いかけ」と「傾聴」
- 日常会話の中に、「考える」きっかけを散りばめる
- 失敗を恐れない心を育て、自己肯定感を高める
- 思春期の子どもには、一人の人間として尊重し、対等な立場で接する
- 学校と家庭が連携し、協力して子どもの成長を支える
これらのポイントを意識して、子どもとの会話を楽しんでください。
日常の小さな会話の積み重ねが、子どもの「考える力」を育み、未来を拓く大きな力となるのです。
私から皆さんへの最後のアドバイスは、
「子どもを信じ、見守り、そして、一緒に成長を楽しむ」
ということです。
子育てに正解はありません。
時には、失敗したり、悩んだりすることもあるでしょう。
しかし、子どもを信じ、愛情を持って接していれば、きっと子どもは、自分の力で考え、未来を切り拓いていくはずです。
皆さんの子育てが、より豊かで、幸せなものになることを、心から願っています。
そして、この記事が、その一助となれば幸いです。
一緒に、子どもたちの輝く未来を応援していきましょう!